JA営農経済事業の自己改革を目指そう

吉田俊幸

吉田俊幸

吉田俊幸

JA総合営農研究会副代表委員

一般財団法人農政調査委員会理事長
元高崎経済大学学長
日本地域政策学会名誉会長

営農経済事業の革新を通じた新時代の農協づくりを

農業・農村・食をめぐる経済・社会の諸環境が大きく変化し、農協は、その原点を踏まえた組織・事業の新たな対応が求められている。その中心は、営農経済事業の改革・革新と収支改善である。

まず、金融の大幅緩和、低金利(マイナス金利)および高齢化の進展のもとで、信用・共済事業の収益のみに依存することが困難となっている。現在、メガバンクや第一、第二地銀では金融事業の収益の悪化、赤字により大規模な合理化と再編が進展している。JAバンクにおいても例外ではない。

以上の状況のもと、JAの営農経済事業の改革・革新および収支改善が緊喫の課題となっている。ただし、収支改善のために営農経済事業の「リストラ」のみに終始するならば、農協が推進している自主改革に反するばかりでなくJAの存在を否定することにつながる。同時に、営農経済事業の改革・革新は、系統内部の機能分担を含めた従来までの経済事業システムからの変革が必要となっている。

人口減・高齢化の進展および単身世帯の増加によって、食料消費量が減少するとともに食に対する消費者ニーズおよび流通が変貌し、多様化している。従来までの農産物販売・生産システムからの転換が求められる。

まず、人口減・高齢化により、国内での食料消量が絶対的に減少する。現在の需要量を維持するには海外での市場拡大を視野に入れることが必要である。「日本農産物は高品質、おいしいから富裕層に売れる」は、相手国の食のニーズを無視した販売戦略といえる。ノルウェーさば、サーモンおよびオーストラリアの米輸出戦略を学ぶ必要がある。日本農産物・加工品の特性を活かした市場調査・開拓を含めた総合的なマーケティングが求められる。JAとJAグループの総合力と自己革新が求められる。

高齢化と単身世帯の増加は、外食・中食のシェア拡大、ニーズの多様化である。業務・加工用需要に対して、契約と安定供給が求められている。パルシステムが高齢者向けの安全な中食の商品開発を生産者グループと共同開発している。ニーズの変化に的確に対応することが求められるとともに、地域の業者との提携を視野に入れることも必要である。

輸出・業務・加工用さらには多様なニーズに対応するには、生産ありき、コストを前提とした販売戦略から、ニーズに見合った販売・生産体制の構築が求められる。農産物は、消費者や実需者に選択されることが基本であり、食の多様なニーズに対応した多様な流通チャネルが展開しているからである。その上で、「生産者手取りを最優先」の原則を貫くことである。

同時に、農業・産地も大きな転換期を迎えており、地域農業振興戦略の構築が求められている。JAは、消費と生産、また、農村と都市とをつなげて、多様なニーズに沿った生産システムの確立に戦略的に関与することが必要である。さらに、農村地域では、中小食品関連業者等も困難な状況に陥っている。6次産業化等を通じた連携が求められる。このような機能をJAが発揮できない場合には、産地には、別の地域コーディネーターが出現することになろう。

次に、組合員の世代交代の過程でJAが組合員に選択されることになり、選択されないJAはその存立基盤を失うことになる。そのためには、組合員の立場に立って、(1)マーケティング・農産加工を通じて販路を拡大すること、(2)それを基礎として、法人や大規模農家、新規参入者、高齢者、女性等の多様な担い手を組織し、農業と地域の振興を行なうこと、(3)組合員に良質で低価格な生産資材や生活資材、サービスを供給すること、そして以上のことを通して生産者手取りの拡大を実現することである。

JAは、営農経済事業改革を通じて、消費者に選択される農産物・食・サービスを供給し、さらに組合員に選ばれ、地域社会に認知される農協に大きく変革することが求められている。

(2019年6月記)

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