テーマ:JA農業経営コンサルティング ―個別経営支援の取り組みと課題

開催趣旨

 農協改革により農業者の所得増大、農業生産の拡大が叫ばれているなか、担い手に評価される営農指導事業の強化が課題となっている。
 営農指導は、営農企画、農業技術、農業経営の三分野に機能が整理されるが、担い手が大規模化・多様化するなか、農業者の農業経営を診断し提案する機能に期待が高まっている。
 従来、JAによる農業経営への支援は、記帳代行、青色申告支援を基礎に、財務分析、経営診断が取り組まれてきた。また、園芸地帯を中心に部会単位で生産販売分析・診断を展開するなど、農業経営にかかる支援を発展させてきている。TACを中心とした出向く活動のなかでも、農業経営にかかる支援業務の重要性が増している。
 このようななか、2018年の第28回JA全国大会決議において、JA農業経営コンサルティングに取り組むと初めて提起され、2021年の第29回JA全国大会でも改めて提起された。この間、全中はJA農業経営コンサルタント資格を創設し、全農は農家手取り最大化に向けた個別支援を強化している。JAバンクも担い手コンサルを展開し始めるなど、全国連もこの分野の支援に注力している。
 このため、第59回JA営農総合研究会では、農業経営支援にかかるJAグループの取り組みをテーマに掲げ、JA、中央会、全農の取り組みを共有し研究を深めることとする。


■全国連からの課題提起
 1. JA農業経営コンサルタント資格の創設について
 (JA全中)
 2. 農家手取り最大化の取り組みについて (JA全農)

■事例1 チーム力で取り組むJA農業経営コンサルティング (島根・JAしまね)
後継者のいない果樹(柿)園の第三者継承による新規就農に力を入れる。出資法人による研修では、キュウリ+市田柿の複合経営を中心に指導。大規模な六次産業化施設「市田柿11の地区本部ごとに経営支援チームを構成。営農・融資・資材・農機・TACなど各部署職員の専門性を活かして支援先の生の声を聞き、経営改善提案を行なう。チームをまとめるのが経営支援担当(農業経営コンサルタント)。JAの総合力発揮の要だ。

■事例2 「農家台帳システム」による提案型の経営指導 (千葉・JA山武郡市)
組合員の作付け状況や労働力、JA事業利用状況などをデータ化したJA独自の農家台帳システムを整備。データをもとに経営改善策を提案し、担い手の所得増大や産地づくりを進めている。

■事例3 稲作法人への農業経営コンサルティング (新潟・JA新潟中央会)
市民農業塾やJA運営の市民菜園など、都市住民が農にアクセスできる多様な入り口を用意。准組合員も含む新しい「農家」が続々誕生し、その中から地域農業リーダーも生まれている。新規就農者の販路ではJA直売所が大きな支えに。

■総括 (JA全中)