JA営農経済事業の自己改革を目指そう

商談会参加のためのヒント

JA-IT研究会 2016年度人材養成セミナーより

 今年も9月5日(月)~7日(水)にかけ、群馬県甘楽町・甘楽ふるさと館において2016年度人材養成セミナーが開催されました。第8回目となる今年、北海道から沖縄まで全国のJAから、過去最多となる47名の受講生が参加。志を同じくする仲間として3日間ともに学びながら、互いの課題や悩みを語り合い、意見交換に話を弾ませました。
 講義では、農産物マーケティングの第一線で活躍してきた講師陣が、流通・小売業界の最新動向、生産・販売戦略および6次産業化の要諦を伝授。実需サイドの講師陣からも、これからのJAの産地づくりや農産物販売に求められるポイントについて提案をいただきました。
 3日間の講義やプログラムのなかから、商談会へのご参加にむけてヒントになると思われる主なポイントを抜粋して紹介します。

プレゼン資料記載の要点

黒澤賢治氏(JA-IT研究会副代表委員)講義より

 「商談会」は商品デビューのスタート地点だ。それは、単にモノを売る、買う、というだけの話ではなく、生産者を背負った産地、消費者のニーズを捉えた実需、双方の要件をすりあわせながら、協力関係のもとで新たな「商品づくり」を行なっていく場である。できれば、産地~流通パートナー~実需が相互に連携し、一気通貫のシステムを構築できるような、発展的な商談に成長できるよう留意したい。

 産地側が用意するプレゼン資料には、以下のような要件を記載する。

JA組織の実態と生産組織・法人の実態
地域概況(コンパクトに)
商流・物流の流れと手順
栽培ステージならびに特性
商品特性
生産面からの視点

いつ(52週のうちの何週目)
誰が(組織)
何を(作目)
どんな方法で(慣行栽培・特栽・有機無農薬<認証団体>)
どれだけ(生産面積・生産量)
いくらで(値決め方法・単価・面積契約)
どこへ(量販・生協・業務実需)
どんなアイテムで(荷姿)
どう発送するか(流通方法)
販売代金決済方法

 こういった情報をしっかりしたデータとともに明記し、さらに、商品にまつわるストーリーや調理レシピ、JA広報誌や地方新聞記事、受賞歴などの参考資料なども添付して、ビジュアル的にもわかりやすいプレゼン資料を準備していただきたい。

 

TPCを明確に

松岡 公明氏(JA-IT研究会 企画委員)「模擬プレゼン」コメントより

 商談に臨むにあたりまず重要なことは、T(ターゲット)P(ポジション)C(コンセプト)を明確にすることである。

 T(ターゲット)=どういった実需形態を狙っていくのか。小売量販店、生協、加工業務用、学校給食、JA間連携。なるべく具体的にターゲットを絞り、そのニーズにいかに応えていくかを検討する。

 P(ポジション)=産地の特色。他産地とどのように違うのか、自己の産地の強みを具体的に提示する。品質なのか、量なのか、あるいはさまざまな規格に対応できる体制や実需までの距離など、特に「売り」となる部分を前面に出す。実需によってニーズは多様であり、売りが明確になっていれば、うまくそれにマッチする相手を見つけられる可能性は高い。

 C(コンセプト)=商品のこだわりをしっかりとアピールする。生産方法や品質管理、栽培履歴など、こだわった取り組みをしているにもかかわらず、JAは全般的にアピールが下手である。現場を知らないバイヤーにもきちんと情報が伝わるよう、工夫が必要だ。

 

互いにビジョンと責任をもって

工藤 友明氏(株式会社ジーピーエス(パルシステム生活協同組合連合会)事業本部長)講義より

 産地とともに消費者の状況・家族構成なども地域差が大きく、全部を統一した商品の扱いは無理が来ている。そこで宣伝や消費者ニーズの把握も地域ごとに展開している。OCRの注文用紙も「今週あなたにおすすめなのはこういう商品です」、電子媒体でもメールで「あなたにおすすめはこういう商品です」という案内を送ったり、こういった細かいことをたくさんやらないと消費者ニーズはとらえられない。そこに生産者がどうかかわっていくかは非常に重要なことで、そのためにも産地の5年後、10年後を考えるビジョンはしっかり話し合ってつくる必要がある。

 あるサツマイモ産地の女性生産者との交流のなかで、サツマイモを洗って出す規格に変えるよう、3年かかって取り組んだ。消費者ニーズが変わってきていることを踏まえて、3年かかって提案し話し合ってきたのだ。作業が面倒だといったいろんな事情から長い時間がかかった。女性生産者からは、「パルシステムからさんざん言われて取り組んだが、やってみると倍売れた」と喜んでもらえ、うれしかった。

 産地と生協はお互いの事業にしっかり責任をもって連携していきたい。産地が取り組んだことに対しては結果が出せるような仕事を生協はやっていきたい。

 JA-IT研究会主催の10月の商談会でまたお会いしましょう。

 

生産者と消費者のかけはしに

吉川 和美(合同会社西友 商品本部生鮮食品部青果部 バイヤー)講義より

消費者と生産者が直接つながれる時代

 消費者が欲しがらないものは、どんなにつくっても売れない。一方、生産者が犠牲になるような取引は持続しない。消費者と生産者のどちらにもメリットがなければならない。今は、その気になれば消費者と生産者が直接つながることのできる時代。へたをすれば量販店もJAも要らない、ということになりかねない。そういう緊張感を持ちつつ、量販店は、消費者に量販店で買うことを選択してもらえるように、JAは、生産者がJAに出すメリットを感じて選んでもらえるように、しっかりとした存在感を持って役割を果たしたい。

 商談の場でJAは、きちんと商品の再生産価格(コストだけでなく人件費も考慮したもの)を計算し、提示していただきたい。もちろん、量販店のバイヤーとしては、「安く欲しい」のが基本スタンスだが、生産者がきちんと継続的に再生産できる価格の重要性は理解できる。一方、バイヤーは消費者の動向をよく把握している。再生産価格が高いと感じられた場合は、可能な限り下げる努力はしてほしい。

品目の強みをしっかりアピールしよう

 それぞれの品目の何が強みで何が弱みかをきちんと把握し、強みについてはしっかりとアピールしてほしい。たとえばスーパーに出すのであれば、「品質は普通。だけどともかく量はある。安定して出せる」というのもひとつの売りだ。逆に「量はないけれど、とてもおいしい。どこの産地にも負けない」、あるいは「すべて生産者の顔が見える。いつ収穫したか、すべてわかる」ということでもいい。量販店もバイヤーも多様だ。ある商談では価値を認められなかったとしても、別の場では強く求められるということもある。

将来のビジョンを持とう

 「5年後にはうちの商品でこのスーパーのこの棚をすべて埋める」「生産量を2倍にする」「日本全国のスーパーに並べる」というような、具体的なビジョンをしっかり持っていただきたい。スタートは10ケースからでもいい。5年後、10年後にどうなっていたいか。そこに向けて、小さなことをひとつひとつ積み重ねていくことが大切だと考えている。

 

(事例)JA-IT研究会の商談会で販路を開拓

鈴木信吾氏(JA遠州中央 営農事業部 直販課課長)へのインタビュー

 鈴木氏は、2009年に開催されたJA-IT研究会第1回人材養成セミナーを修了され、そこでの気づきを活かしながら、直販販路の拡大や地元種苗会社など提携先の拡大にひたむきに取り組んでこられました。第1回セミナーの後の商談会にも参加し、販路開拓を成し遂げています。その歩みを振り返っていただきました。

 JA-IT研究会の商談会に参加したのは、「儲かる農業」への転換を目指して、新しい品目を試験的に導入しはじめたタイミングだった。生産を拡大していきたいが具体的な販売ビジョンがない。それでは生産者に栽培を依頼することもできない。なんとか独自の販路を開拓したいと必死だった。

 商談会ではパルシステムさんとお話をさせていただき、情報を交換しながら、結果的には一緒に商品開発をしていくようなかたちとなった。実際に会って話をしてみないと、わからないことがたくさんあると実感した。それは産地側だけでなく、実需側も同じである。

 販路の開拓と並行して、生産者の理解を得、JAの供給体制を整えていく作業も必要だった。批判の目もないわけではないし、新しいことを始めるには大変なエネルギーがいる。それでも、「なにかしら一歩踏み込む」覚悟を持って走り続けた。

 最初はナバナ1品目から始まったパルシステムとの提携も、現在ではチンゲンサイ、空芯菜、キャベツ、イチゴなどを柱とする周年型の他品目取引へと拡大し、取引額も年間約8,500万円となっている。これからも、「農家、地域のため」という大命題のもと、農協の使命である「営農と組合員の生活向上」を目指し、「正しいことは反対されない」と腹を据えて、事業をすすめていきたい。

(文責:JA-IT研究会事務局)

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