仲野隆三
農業に見える課題とJA総合営農研究会の目的
JA-IT研究会が設立されて19年が経った。これまで先進的なJAや農業生産法人、実需者や教授陣などを講師に招き、JAのあり方、直販取引や加工・業務用野菜の契約取引手法などを研究し、集落営農と地域農業の活性化、人づくりなどの取り組みについて学習しながら、その普及を目的に、地域レベルと全国レベルの公開研究会などの活動をおこなってきた。
JAにとって大きな節目は、規制改革会議の答申と政府による農協改革の断行だった。これを機に全国のJAは自主的な改革目標を掲げ、「組合員の所得増大」と「生産資材コストの低減」など系統一体となった取り組みにより、組合員から一定の評価を得たと思う。
JA総合営農研究会の新たな出発に際し、農業生産基盤とJA合併にかかる事業拠点の広域化、信用事業の減益と農業部門収支の均衡について若干触れたい。
営農経済事業にとって深刻な課題が、農業生産力の低下ならびに就農人口の減少である。2010年に260万人だった農業就業人口は、18年には175万人に減少(うち女性就業人口は80万人、65歳以上人口は120万人)、平均年齢は66.8歳と高齢化が進んでいる。
また、基幹的農業従事者数は145万人(うち65歳以上が98万人、女性が58万人)で平均年齢も66.6歳と同じく高齢化が進んでいる。新規就農者数は5万5000人と横ばいの状況にある。2017年のJA組合員数は450万人、前年比マイナス1.5%と減少しており、組合員の農業継承とあわせて農外からの就農者の育成支援に取り組む必要がある。
農業経営体数は05年の200万から17年には137万経営体にまで減少、その内訳は、家族経営体134万に対し法人組織経営体が3万3000。後者が増加しているが、ここにきて伸び率が鈍化している。経営体の安定には経営規模や売り上げ、農業従事者数、販路および運転資金の調達といった要因が挙げられ、JAのサポートが欠かせない。
全国のJA数は620となり、1県1JAも出現している。合併は組織機構の効率性とコスト低減が目的でもある。JAが広域となるため、役職員と組合員・集落とのつながりが希薄化しやすい。JAが組合員にとってより身近な営農拠点となるような事業システムと人材配置について検証すべきだ。
農業部門の収支(採算性)をどう改善するか。ゼロ金利政策の影響等による信用事業の減益はJA経営にとって深刻な問題となっており、営農経済事業機械施設を含めた部門採算性の改善が求められている。販売事業システムや機械・施設の利用事業の検証と研究により部門収益の均衡を再確認する必要がある。
JA総合営農研究会は食料・農業・農村を支えるJAの基本事業である営農経済事業の新たなる方向性の創出と事業改革に取り組む。そのねらいは組合員の農業収入の安定確保にある。
全国のJAとともに、「JAは地域農業と農山村活性化の司令塔である」という自覚にもとづき、地域特性を生かしながら農業、集落、地域の活性化に取り組み、またTPPおよびFTA、EPAなど自由貿易による農産物輸入の拡大による困難に際し、地域の食文化を見直し、知恵を絞り6次化等(農産加工)などにより地産地消を推し進め自給率を高め、組合員の農業経営の安定に取り組みたい。
(2019年6月記)