数次にわたるJA 合併により支所・支店の統廃合がすすめられてきた。全国のJA 支店数は、2000 年の1万3793 支店から16 年には7828 支店まで減少している。戦後草創期の農協数は約1 万3000 組合であるから、この十数年間でJA は「地域のシンボル」に手を付けてきたということになる。近年では奈良、沖縄、香川、島根が「1県1JA」。さらに24 府県で「1 県1JA」「県域JA」の構想が検討されている。マイナス金利政策の長期化に伴う経営環境の厳しさもあり、今後とも支所の統廃合はすすむであろう。

 平成の市町村合併も一気に進み、住民サービス機能の低下が指摘されている。行政主導型の地域政策の限界も見えてきた。JA が組織・事業基盤としてきた集落コミュニティや農家組合も異質化、弱体化し、地域によっては事実上崩壊するなど、「頼みの基礎組織」として機能しなくなっている。家族、コミュニティ、地域社会、職場社会など個人と国家の間のクッションとしての「中間団体」も空洞化している。

 家族、市場、国家の「近代トリオ」の限界があらわになるなかで、新しい協同やネットワークを組みなおそうとする動きが生まれてきた。「私助」「公助」の限界と課題が明らかになるなかで、過疎地域では地域おこし協力隊の支援活動も相俟って「共助」「住民自治」による地域づくりへの取り組みが広がっている。

 強化のために支店協同活動を提起したが、その多くは職員による活動に止まっており、組合員参加の活動レベルに到達していない。集落営農のなかには、営農面だけでなく生活面も含めて、「小さな役場」「小さな農協」の機能を併せ持つ地域運営組織として活動している事例も見られる。また一部では、廃止されたJA 支店の施設を拠点としてガソリンスタンドやミニ購買店舗を運営するといった地域運営組織の取り組みも見られる。しかしながら、それらは、JA の主体的な取り組みとはなっていないケースが多い。研究者等からは、JA は地域づくりにどちらかといえば消極的だという指摘もなされている。第28 回JA 全国大会(19 年3 月)の決議が掲げるように、これら組織との積極的な連携が求められる。

 組合員は地域住民である。地域の課題に無関心ではいられない。協同組合第7 原則には「地域社会への関与」がある。合併による「大きな協同」による経済合理性と「小さな協同」による参加・民主的運営のバランスも欠かせない。

 JA の基礎組織として農家組合、実行組合の活性化をどうするか、住民参加型の地域づくりの取り組みにどのように関与していくか。支所・支店統廃合に伴う代替措置としての自治組織の育成にどう取り組んでいくか。JA のあるべき関わり方、方策について議論したい。