テーマ経営コスト高騰と農業経営
〜止まらない生産資材・物流コスト高騰にJAグループはどう向き合うか?〜
日 時2023年2月3日(金)13:00~17:30  4日(土)9:00~12:00
会 場JAビル 401会議室(東京都千代田区)
および オンライン(zoom使用)
1日目 2月3日(金) 〈農業経営、地域農業全般を俯瞰したコスト対策〉

司会 吉田 俊幸(JA総合営農研究会 副代表委員)

開会挨拶 
黒澤 賢治(JA総合営農研究会 代表委員)
肱岡 弘典(JA全中 常務理事)

基調報告 資材費高騰にどう対応するか〜農業経営におけるコストダウンの課題と⽅法〜
梅本 雅(JA全農 テクニカルアドバイザー)

⽣産者事例1 混合堆肥複合肥料を活用した肥料高騰対策〜⼤規模農業法⼈とJAグループの取り組み〜
竹村 正義(㈲サンワアグリビジネス 代表取締役)
松本 宏史(JA全農いばらき ⽣産資材部県⻄推進事務所⻑)

⽣産者事例2 生産工程全般を俯瞰することで⼤幅なコスト削減を実現〜横⽥農場の取り組み〜
横田 修一(㈲横田農場 代表取締役)

質疑・討論

2日目 2月4日(土) 〈持続可能な物流体制の構築にむけて〉

司会 仲野 隆三(JA総合営農研究会 副代表委員)

解題
仲野 隆三(JA総合営農研究会 副代表委員)

発表1 持続可能な物流体制の維持に向けた取り組み
秋⼭ 義郎(JA全農 経営企画部物流対策課課⻑)

発表2 ⻘果物物流の合理化に向けた全農の取り組み
井村 ⻯也(JA全農 園芸部園芸物流対策課課⻑)

発表3 2024年問題など物流課題への対応策
星⼭ 浩孝(ホクレン農業協同組合連合会 物流部物流一課課⻑)

発表4 JA全農秋⽥県本部の⻘果物物流対策について
井村 ⻯也(JA全農 園芸部園芸物流対策課課⻑)

発表5 ⻘果物のパレット化推進に向けた共通管理システム構築の取り組み
秋⼭ 義郎(JA全農 経営企画部物流対策課課⻑)

質疑・討論

開会挨拶
黒澤 賢治(JA総合営農研究会 代表委員)
開会挨拶
肱岡 弘典(JA全中 常務理事)
梅本 雅
(JA全農 テクニカルアドバイザー)
竹村 正義
(㈲サンワアグリビジネス代表取締役)
松本宏史
(JA全農いばらき⽣産資材部県⻄推進事務所⻑)
横田 修一
((有)横田農場 代表取締役)
1日目 質疑・討論
1日目 質疑・討論
1日目 質疑・討論
吉田 俊幸(JA総合営農研究会副代表委員)
仲野 隆三(JA総合営農研究会副代表委員)
秋⼭ 義郎
(JA全農経営企画部物流対策課課⻑)
井村 ⻯也
(JA全農園芸部園芸物流対策課課⻑)
星⼭ 浩孝
(ホクレン農業協同組合連合会物流部物流一課課⻑)
2日目 質疑・討論

開催報告

 第61回公開研究会のテーマは「経営コスト高騰と農業経営」。

 ロシアによるウクライナ侵攻等を背景としたエネルギーコストの上昇や、円安の進展、世界の人口増大に伴う食糧需要の拡大等を背景に、資材価格が高騰し、農業経営を圧迫する大問題となっています。

 加えて、物流の領域では、働き改革によるトラックドライバーの労働時間の上限規制、いわゆる2024年問題が差し迫っており、特に大消費地から遠い地域からの農産物輸送に大きな影響があるとみられます。

 これらの問題の現況と全体像をとらえ、法人経営におけるすぐれた実践事例にも学びながら、JAおよびJAグループがどう対処していくかを議論しました。

経営全体を俯瞰したコスト対策を

 1日目にまず、農業経営におけるコスト問題の第一人者である梅本雅JA全農テクニカルアドバイザーが基調報告。梅本氏は、「高騰している資材に注目するだけでは不十分であり、農業経営全体を俯瞰した対策が必要だ」と指摘したうえで、資材費の高騰が農業経営に大きな脅威となっている今だからこそ、自経営の経営収支や労働・資材投下の状況を把握・分析し、その上で経営改善策を実施していく必要があるとし、その課題と方法を提起しました。

 続いて、茨城県有数の大規模農業法人㈲サンワアグリビジネスの竹村正義代表取締役と松本宏史JA全農茨城県本部県西推進事務所所長が、露地野菜の肥料を「混合堆肥複合肥料」に置き換える取り組みについて報告しました。これは堆肥と化成肥料などの普通肥料を混合してペレット化した肥料。施肥コストの低減に加え、省力化・成分利用率向上、土づくりなどの総合的なメリットが見込まれ、SDGsやみどりの食料システム戦略への対応にもつながると期待されます。

 1日目の最後は、同じく茨城県の大規模水稲経営、横田農場の横田修一代表取締役による報告。機械の減価償却費を抑えるため、面積が増えても機械を増やさず、2.5km四方、168haの水田を田植機とコンバイン1台ずつだけで作業する、そのために早生から晩生まで8品種を作付けし作期を分散するなど、徹底的なコスト削減をはかっています。

「2024年問題」にどう取り組むか

 2日目は、農畜産物を産地から市場、そして消費者まで運ぶ「物流」に焦点を当てました。差し迫った問題は、2024年4月からトラックドライバーの労務管理の厳格化により、今後、農産物流通の維持が困難な状況が想定される、いわゆる「2024年問題」。あるシンクタンクの想定によれば、2030年には全国の35%の貨物が運べなくなる可能性もあるといいます。

 そこで、秋⼭義郎JA全農経営企画部物流対策課課⻑、井村⻯也同園芸部園芸物流対策課課⻑、星⼭ 浩孝ホクレン農業協同組合連合会物流部物流一課課⻑の3氏が登壇し、物流をめぐる問題の全体像と、今後も物流体制を維持し食料の安定供給を確保するべく取り組んでいるさまざまな方策について報告しました。方策とは、たとえばリードタイムの延長、産地から消費地までパレットに乗せて運ぶ「一貫パレチゼーション」、県域の集荷場を統廃合し、県内の集荷と首都圏などへの運送を分けて行なうなどです。なお、現状ではパレットの流通途中での逸失が問題となっているため、共通パレット管理システムの検討が急がれるとのことです。

詳細報告と公開研究会の動画記録
会員はパスワードを入れると、より具体的な報告内容(PDFダウンロード)と各報告者の発表動画をご覧いただけます。
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開催趣旨

 我が国は農業生産に要する肥料、飼料、燃油、プラスチックフィルム等の原料のほぼ全てを輸入に依存しているために、近年の国際情勢の大混乱による調達困難の状況が大きく影響して、かつてない生産資材価格高騰が続いています。加えて、物流コスト増に必至とされる「物流業界の働き方改革」適用開始も2024年4月に迫っています。これらによって経営費全体が大きく膨れ上がる懸念と経営の将来を描きにくくなった不安感から、生産の現場では極めて深刻な問題となっています。
 肥料原料の高騰は、主産国である中国の輸出規制とウクライナ戦争によるロシア、ベラルーシからの輸入停滞によって、それ以外の産出国に需要が集中しているためであり、プラスチックフィルムや燃油の原料となる原油の高騰も、ロシア産原油に欧米各国が輸入規制をかけていることによって、ロシア以外の産油国に需要が集中しているためです。
 また、農畜産物の価格だけでなく生産資材費にも大きな影響を及ぼす物流コストについても、軽油やガソリンの値上げに加えて、「2024年問題」とも言われている「時間外労働の上限規制適用による月あたり積載量の減少」と「割増賃金率の引き上げによる人件費上昇」等によって値上げが確実視されています。
 そこで本研究会では、生産資材・物流コスト高騰が農業経営に及ぼす影響と課題について今一度整理をして共有化を図ります。そして、肥料、物流といった個々の対策だけでは充分な削減効果が期待できない現実を踏まえて、メスを入れる対象を「経営全般」に拡大し、コスト面だけに捉われない、既存経済事業の深耕、他事業・他企業との柔軟な組合せ、さらには新規事業の創出等も視野に入れ、事例報告を踏まえながら解決方向を見出すための討論を重ね、認識を深めていきます。