営農経済事業の改革・革新および収支均衡の実現は、JA自己改革の中心的な課題であり、同時に、我が国の経済・社会をめぐる諸環境が大きく変化するなか、緊喫の課題でもある。

 JAの経営基盤の一つである金融事業は、農林中金からのJAへの配当利率が段階的に引き下げられ、部門収支の悪化が予想される。また、金融緩和とマイナス金利により、メガバンクをはじめ各銀行において大規模な合理化と再編が進展している。農林中金を頂点とするJAバンクも例外ではない。以上の状況のもとで、営農経済事業改革や収支改善を通じて、JAの新たな経営基盤と新事業戦略の構築が求められている。とはいえ、経営収支改善のために、合理化・リストラのみに終始するならば、JAの存在そのものを否定することになる。

 営農経済事業改革は、本研究会の目的であり、設立以来、様々な視点から追求し、多くのJAにおいて改革を実現してきた。これまでの研究会およびJAでの実践の蓄積を踏まえ、新たな時代に適応した営農経済事業改革と収支均衡を実現する戦略を構築することが必要である。

 今回の公開研究会は、前回に引き続き、営農経済事業の収支均衡を目指したJAの新事業戦略を検討する。とくに、販売事業、購買事業、営農指導等を改革するうえでのリスクとその対策に重点を置く。そのうえで、営農経済事業の改善を通じて収支均衡を実現しているJAの具体例から改革のヒントを確認する。また、営農経済事業の柱だが多くのJAでは赤字であり、運営等が課題となっている集出荷施設やカントリーエレベーター等について、その現状と課題を検討する。さらに、担い手の支援やブランド・マーケティングのための新規事業についても、事例報告とともに課題を整理する。

 報告に基づく議論では、営農経済事業改革とリスク管理、新たな事業展開について参加者とともに共有できることを期待する。